社内業務に関するシステムを一元化して運用・管理できるクラウドサービス「ServiceNow」。
株式会社KYOSOでは、これまでの豊富な運用経験をもとに、ServiceNowの企画立案から運用・保守、内製化までトータルでサポートしています。
本記事では、ServiceNowナレッジ管理の基本的な機能と特徴、アピールポイントについてまとめてみました!今後の皆様の学習やワークショップを実施する際の参考にしていただけますと幸いです。
目次
はじめに
ナレッジとは英語で知識や経験のことを示します。ServiceNowのナレッジ管理(Knowledge Management)とは、組織の従業員の知識や経験をナレッジ記事として具現化し、管理、活用するためのシステムです。ServiceNowのナレッジ管理には組織の従業員のナレッジを最大限に活用するための便利な機能がたくさん備わっています。
※今回、検証のために使用したPDIはUtahバージョンですが、添付の製品ドキュメントは最新のWashingtonバージョンのものです。ご自身で操作をされる際は、初めにインスタンスとドキュメントのバージョンが合致していることをご確認されることをお勧めいたします。
ServiceNowナレッジ管理の特徴とメリット
ServiceNowのナレッジ管理の特徴とメリットについてご紹介いたします。ServiceNowナレッジ管理の主な特徴として、個々のナレッジ記事をナレッジベースという単位で管理をする点、ナレッジを公開または廃止するための承認ワークフローが存在する点などが上げられます。以下でServiceNowナレッジ管理の特徴について詳しくご説明いたします。
特徴①ナレッジ管理の構造化のための仕組み
・ナレッジベース
ServiceNowでは各ナレッジ記事を、組織のグループや製品ごとに区分されるナレッジベースと呼ばれる単位で管理します。ナレッジベースごとに公開/廃止ワークフローを設定したり、ユーザー基準によるナレッジベース記事へのアクセス制御が設定できます。
アクセス制御や承認ワークフローの他にも
- 所有者:ナレッジベースに対して責任を持つ一人のユーザー
- マネージャー:ナレッジベースを管理する複数のユーザー
- 注目のコンテンツ:ナレッジホームページの「注目コンテンツ」セクションに表示する記事
- ナレッジカテゴリ:ナレッジベースに関連のあるナレッジカテゴリ
などの設定がナレッジベースごとに適応可能です。本記事で紹介させていただいた設定以外にも、ナレッジベースごとに適用可能な設定がたくさんございます。[ナレッジ]>[アドミニストレーション]>[ナレッジベース]にアクセスし、設定が可能な内容を確認してみてください!
特徴②ナレッジ記事の標準化のための仕組み
・テンプレート
ナレッジベースごとに利用可能な記事テンプレートを設定することができます。ナレッジベースの寄稿可能ユーザーは、設定されている記事テンプレートのうちの1つを使用してナレッジ記事を作成できます。
※テンプレート機能を使用するには、Knowledge Management Advanced (com.snc.knowledge_advanced) プラグインをアクティブ化する必要があります。
・承認ワークフロー
ナレッジを公開または廃止する前に、必要に応じてナレッジベースの所有者およびマネージャーに対して承認を仰ぐことが可能です。ServiceNowナレッジ管理では、各ナレッジベースに対して以下の4つのワークフローを設定できます。
- ナレッジ – 承認公開:ナレッジ記事を公開する前に、ナレッジベースの所有者およびマネージャーが承認します。
※却下された場合、ナレッジ記事はドラフト状態のままとなります。 - ナレッジ – 承認廃止:ナレッジ記事を廃止状態にする前に、ナレッジベースの所有者およびマネージャーが承認します。
※却下された場合、ナレッジ記事は公開状態のままとなります。 - ナレッジ – すぐに公開:承認を必要とせず、ドラフト記事を即時に公開します。
- ナレッジ – すぐ廃止:公開されているナレッジ記事を即時に廃止します。
ServiceNowナレッジ管理を使用するメリット
次に、ServiceNowナレッジ管理機能を活用するメリットです。ServiceNowのナレッジ管理機能を使用することで
- 従業員エクスペリエンスの向上
- ユーザーによる問題の自己解決の促進
- 効率化、意思決定の促進
- イノベーション促進
などの効果が得られます。組織内の情報の属人化を防ぎ、一元管理を可能にすることで、組織にとって様々なメリットがもたらされることが期待できます。
ナレッジ記事の作成
※ナレッジ記事の作成・編集およびインポートを行うには、適切なロールとナレッジベースへの寄稿可能権限が必要です。
ナレッジ記事は複数の手段により作成することが可能です。例えば、手動作成、既存のレコードから作成、Wordドキュメントおよび外部ナレッジソースから記事をインポートする方法があります。本記事では手動でナレッジ記事を作成する場合と既存レコードから記事を作成する場合のふたつの方法について詳しくご説明させていただきます。
ナレッジ記事の作成方法①手動作成
セルフサービス([セルフサービス] > [Knowledge])、ナレッジアプリケーション([すべて] > [Knowledge])、ナレッジ管理ホームページ([セルフサービス] > [Knowledge] > [ホームページ])より記事の新規作成ページへとアクセスします。ナレッジ記事を作成したいナレッジベースを選択します。ナレッジベースで利用可能なテンプレートがフィルタリング処理されているので、利用可能なテンプレートを1つ選択し、記事を作成します。
ナレッジ記事の作成方法②インシデントおよび問題レコードからのナレッジ記事の作成
インシデントレコードからナレッジ記事を作成する場合、インシデントフォームの解決情報タブでナレッジチェックボックスをオンにします。すると、レコードのクローズ時にドラフトのナレッジ記事が作成されます。
問題レコードからナレッジ記事を作成する場合は、問題レコードを開き、関連リンクの[既知のエラー記事を作成]をクリックします。既知のエラー記事とは、インシデントを回避するために、問題の根本原因と回避策をまとめた文書のことを示します。
※問題レコードから既知のエラー記事を作成するためには、別途プラグインの有効化が必要となります。[システム定義]>[プラグイン]にアクセスして
・Problem Management ベストプラクティス – Madrid
(com.snc.best_practice.problem.madrid)
・Problem Management ベストプラクティス – Madrid – ナレッジ統合
(com.snc.best_practice.problem.madrid.knowledge)
を有効にします。
Wordドキュメントおよび外部ナレッジソースからの記事のインポート方法については、ServiceNow製品ドキュメントに詳細情報と手順が紹介されていますので、確認してみてください。
ServiceNow製品ドキュメント – 「外部ナレッジソースとの統合」
Tips:ナレッジのプロパティ
例えば、言語設定が英語のインスタンスにおいて、日本語で作成したナレッジ記事を探しても見つからないことがあります。これは、ナレッジプロパティのある設定が有効になっていないことが原因として考えられます。
ナレッジプロパティのある設定とは、「複数言語の検索を有効にします」です。このプロパティを有効にすることで、作成されたナレッジ記事の言語設定にかかわらず、日英両環境で全ての記事がまとめて表示されるようになります。
ナレッジのプロパティには他にも、ナレッジ管理に関する様々な設定を変更、適応することが可能です。目的の設定が無いかどうか、一度ナレッジプロパティを確認してみてください。ナレッジプロパティには、[すべて]>[ナレッジ]>[アドミニストレーション]>[プロパティ]からアクセスすることができます。
ユーザー基準を用いたナレッジ記事へのアクセス制御
ユーザー基準と呼ばれるユーザー分類方法によりナレッジベースごとにアクセス制御を設定することができます。ユーザー基準は、ユーザーまたはグループ、ロール、会社、部門、ロケーション情報を用いて作成します。
基本的には、ナレッジベース単位で読込可能、寄稿可能、読込不可のアクセス制御を設定しますが、必要に応じてナレッジ記事単位でアクセス制御を設定する事も可能です。本記事では取り上げませんが、ナレッジ記事単位でのアクセス制御を設定する方法についてはServiceNow製品ドキュメントで詳しく説明されていますので、是非、チェックしてみてください。
製品ドキュメント – 「ユーザー基準によるナレッジ記事レベルでのアクセス制御」
フィードバック
フィードバックとは、ナレッジ記事を継続的に改善するための仕組みです。ナレッジ記事に対して以下の方法でフィードバックを送信することができます。
- 記事の有効性を星1~5のスケールで評価する
- 記事が「役に立った」または「役に立たなかった」を選択する
- 記事にコメントを残す、過去のコメントを表示するまたはコメントに対して返信する
- 記事が不適切または不正確としてフラグを設定する
このように、様々な方法を通じて、ナレッジ記事に対するフィードバックが得られます。フィードバック内容を参考に、継続的にナレッジ記事を改善することによって、ナレッジ記事をユーザーにとってより有用性の高いものへとブラッシュアップすることができます。
さいごに
このように、ServiceNowナレッジ管理には、ナレッジを作成し、管理、活用するための便利な機能がたくさん備わっています。ServiceNowナレッジ管理機能を活用して組織全体のナレッジを共有し、運用することで様々なメリットが享受できると考えます。本記事を通じて、ServiceNowナレッジ管理の魅力がうまく伝わりましたでしょうか?
最後まで閲覧いただき、ありがとうございました!
あなたにとって有益な情報を提供できたのであれば、大変嬉しく思います。
参考文献
- ServiceNow – 「ナレッジ管理(KM)とは?」
- ServiceNow製品ドキュメント – 「ナレッジベースの作成」
- ServiceNow製品ドキュメント – 「ナレッジ記事の作成」
- ServiceNow製品ドキュメント – 「既知のエラー記事の作成」
- ServiceNow製品ドキュメント – 「ナレッジ記事へのフィードバックの提供」
- ServiceNow製品ドキュメント – 「ナレッジベースおよび記事へのアクセスを制御するユーザー基準の作成」
- ServiceNow製品ドキュメント – 「インシデントまたは問題からのナレッジ記事の作成」
投稿者プロフィール
- 2023年6月からServiceNowに関する学習を開始しました。
保有資格
・ServiceNow Certified System Administrator
・ServiceNow Certified Application Developer
・ServiceNow Certified Implementation Specialist - IT Service Management